琉球大学は独立行政法人国際協力機構(JICA)と連携覚書を結んでおり、その一環として保健学研究科が中心となって年間8編の保健分野の課題別研修を開発コンサルタントの株式会社ティーエーネットワーキングとともに実施してきました(http://www.okinawaghealth.com/user.php?CMD=115404700000000)。
これらはアジア・大洋州・アフリカ・中南米といった世界中の低中所得国から各国の保健省や関連機関からの参加者が、公衆衛生計画・母子保健・感染症対策等に関して、沖縄と各国の経験をシェアし、参加者と研修実施者が共に学び合う研修コースとなっています。
今回、JICA本部からの強い要請によって、院内感染対策に焦点をあてた新型コロナ対策に関する医療関連が実施されました。今回の研修は、東欧3国(ウクライナ・モルドバ・北マケドニア)の中核病院と保健省で新型コロナ感染症に関わる医師・看護師・行政官計6名に対して、オンラインを用いて令和3年9月15日(水)から9月30日(木)まで実施されました。
研修プログラムは院内感染に焦点をあてた病院管理を中心に日本と沖縄の新型コロナ対策の経験をシェアするオンデマンドの講義と、各国の状況のシェアとアクションプランの作成を行うオンタイムのセッションによって構成されました。
オンデマンド講義では、医学研究科の藤田次郎前病院長を始めとした琉球大学病院の全面的な協力のもと、保健学研究科の大湾知子准教授を中心に昨年まで実施してきた感染症対策の研修内容をブラッシュアップさせ、新型コロナウイルス感染症対策における院内感染対策の経験を5本の講義と病院内を撮影したビデオプログラムにて紹介されました。さらに今回医学研究科の梅村武寛教授、関口浩至助教の協力により救急部へもカメラをいれ撮影することが実現し、この動画をもとに救急部の対応も紹介することができました。研修員から、遠隔ながら自分達の病院と比較しながら学ぶことができ、琉球大学病院の対応の素晴らしさを体験することができたとの声が寄せられました。
オンラインセッションでは、院内感染対策のみならず、診療にあたるスタッフが各国で精神的においこまれ離脱がやまない状況も報告され、涙ぐむ研修員もおりました。しかしながらオンタイムでアクションプランを共有していくなかで、どのように人材を維持し診療を継続していくのかといった人材管理に対して前向きな姿勢がみられるようになり、国際研修の大きな成果を感じられました。
本プログラムは、パンデミックの状況によりますが、来年度は研修員に来沖いただき詳細なアクションプランを作成する予定であり、研修員からも来沖によるさらなる学びに強い期待が寄せられています。
また、今回の研修では、看護統合実習の一環で、保健学科4年次の学生も参加し、英語での受講に戸惑いを感じておりました。しかし、指導教官に対する最終報告では、「感染対策の環境整備の重要性があらためて認識できた」、「東欧の国の感染対策や課題を知ることができ、職員の精神的ストレスの管理が重要であることが理解できた」、「患者さんへのケアだけでなく、医療従事者として自分自信の体調管理が重要であることが認識できた」、「患者状況と現在の対応策を照らし合わせ常に最善策をさぐり改良することが重要な視点であることがわかった」、といった発言が得られるなど、大きな学びになったようです。